スムーズ・ハンドフィッシュ(Sympterichthys unipennis)が、現代の海水魚としては初めて絶滅を宣言された。トゲだらけのヒレをもち、頭部にカギ状の突起があるこの魚は、浅瀬の海底に生息していた。最後に目撃されたのは1802年。フランス人の生物学者フランソワ・ペロンが、オーストラリアのタスマニア沿岸付近で捕獲し、パリの自然史博物館に持ち帰ったときのことだ。
その後は長年にわたる調査にもかかわらず、スムーズ・ハンドフィッシュが見つかることはなかった。そして2020年5月、種の保全状況を決定する科学者団体の国際自然保護連合(IUCN)によって正式に絶滅種(extinct)とされた。
ハンドフィッシュという名前は、小さな手のようなヒレを使って海底を歩くように移動する姿から付けられた。ハンドフィッシュ科の残りの13種は、いずれもまだ現存していると考えられるものの、うち7種は近くても2000年以来、目撃されていない。1種を除き、すべてが絶滅危惧種(endangered)または近絶滅種(critically endangered)、あるいは状況を確定できるだけのデータがないことを意味する情報不足種(data deficient)に分類されている。
スムーズ・ハンドフィッシュの絶滅は、ハンドフィッシュ科の魚がいかに気候変動や生息域の破壊、海洋汚染といった環境の変化に敏感であるかを物語る。というのも、200年以上前に最初で最後の標本が記録されたときには、スムーズ・ハンドフィッシュはほぼ間違いなくありふれた魚だったからだ。今回の絶滅宣言は、他の種のハンドフィッシュをはじめ、タスマニアのような場所の固有種も絶滅するという警告だと科学者らは言う。
「まさに炭鉱のカナリアです」とオーストラリア、タスマニア大学海洋・南極学研究所(IMAS)の魚類学者ネビル・バレット氏は語る。
派手で地元好き
「もしもハンドフィッシュを見たことがなければ、ヒキガエルを想像してみてください。それを派手な色のペンキに浸けて、悲しい話を聞かせてやり、サイズが二回り大きな手袋を無理やりはめさせてみましょう」。オーストラリア政府や学術機関の研究者たちが率いる「ハンドフィッシュ保全プロジェクト」のウェブサイトにはそんな説明がある。
誰が書いたのかは不明だが、この表現は印象に残ったと、IMASおよびオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の海洋生態学者ジェミナ・スチュアート=スミス氏は言う。
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