本稿では,eスポーツにおける賞金や報酬の支払い,受け取りを自動化するサービス「Edge」を提供する企業・Edgeの創設者兼CEO アダム・ワイト氏によるセッション「eスポーツの“開拓時代”を切り開く〜プレイヤーと企業との正しい関係性〜」をレポートする。
ワイト氏はスポーツ法専門の弁護士として7年のキャリアを積んだのち「ハースストーン」をプレイしたことをきっかけに,2015年にeスポーツ業界に転身。そして2018年に,企業やチームとの契約トラブルなど,eスポーツのプロプレイヤーに起こりうる問題の解決を図るべくEdgeを設立した。
ワイト氏は最初に,とあるプレイヤーが企業とプロ契約を結んだが,報酬を支払ってもらえなかった事例を紹介した。ワイト氏が,そのプレイヤーと企業が交わしたという契約書をチェックしたところ,契約条件や契約期間,報酬額などの基本的な要件が記載されておらず,法律を少しでも知る人ならとても契約とは呼べないような内容だったという。
また主催者がeスポーツ大会の運営とはどういうものかをまったく知らなかったがために,契約に不備が生じて賞金が選手に支払われなかった事例や,インフルエンサーに国をまたいでeスポーツタイトルの映像制作を依頼し,先払いで報酬を渡したが,契約が履行されなかったうえに賠償金も取れなかった事例も紹介された。
こうした問題は,eスポーツ業界が世界中で急速に拡大しているにもかかわらず,国際面も含めた法整備が追いついていないために発生しているとワイト氏は語った。
それではeスポーツとは,そもそも何を指すのか。ワイト氏は,その要件を「競技性のあるゲーム」「大勢の観戦者が存在するゲーム」「プレイヤーの技術を問うゲーム」と定義。とくに,なぜ多くの人達が他人のプレイを観戦するのかについては,リアルスポーツ同様にトッププレイヤー同士が腕を競い合う様を楽しんだり,プレイの参考にしたりできるからだと説明を加えた。
eスポーツとリアルスポーツの共通点はそれだけではない。リーグやトーナメントが開催され,試合を放映・配信する企業や選手や試合のデータを収集・分析する企業などもある。また選手やチームはSNSを活用して,ファンにさまざまな情報を発信している。
さらにワイト氏は,世界のeスポーツ市場が2019年に10億ドル規模にまで成長したことにも言及し,その収入源のトップがスポンサーシップ,続いて放映・配信権,広告,グッズやアイテムの売上であることを紹介。とくに放映・配信権については,近い将来リアルスポーツを超える額になるのではないかと話していた。
そしてリアルスポーツ選手の多くは,弁護士や会計士,エージェントなどを雇用し,報酬や広告などさまざまな契約の処理を行っている。
ワイト氏は,eスポーツ選手のそうした契約処理をデジタル化・自動化するのが「Edge」であると説明。とくにeスポーツはデータドリブンであるため,デジタル処理がマッチしていると語った。
またeスポーツはリアルスポーツ以上にグローバルに展開しており,国をまたいだ契約も珍しくない。さらに,eスポーツは未成年の選手がトッププレイヤーというケースもありうるし,選手がチームを移籍する場合の移籍金をどうするかといったような課題もある。
リアルスポーツには,スポーツで起きたトラブルを,裁判所ではなくスポーツ界の枠内で解決を目指す国際機関としてスポーツ仲裁裁判所が存在するが,ワイト氏は近い将来eスポーツにもそうした機関ができるだろうと見解を示した。
ワイト氏は,そうした環境整備が整わないと(特に賞金や報酬に関する契約が正しく履行されないと)多くの人達はeスポーツをプレイする意義を失ってしまうとアピールし,そうした事態に陥らない解決策の1つとして,自身が提供する「Edge」を紹介した。
このサービスでは,試合やSNSのデータを抽出して,各選手のパフォーマンスに応じた報酬を決定し,選手に支払われるところまで自動化されていることや,ブロックチェーンを活用してそれら取引の透明化を担保していることなどを示し,セッションを締めくくった。
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December 16, 2019 at 01:59PM
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