西伊豆町の近海で釣った魚を、町内で使える電子地域通貨と交換できる企画「ツッテ西伊豆」が今月、同町で始まった。新型コロナウイルスの影響で激減した観光客の誘客と、漁師不足による漁獲量の低下という町が直面する二つの地域課題の解決を目指す。(山中正義)
釣りを通して地域の魅力を伝えるメディア「ツッテ」の編集長を務め、「釣りアンバサダー」を名乗る中川めぐみさん(37)=東京都=が発案した。町の景観や魚を気に入り、釣りで何度か訪れる中、地元の漁業関係者や町役場職員らと交流。町が抱える課題を知り、官民協力で取り組むことになった。
ツッテ西伊豆は、企画に協力する釣り船で釣った魚に限り、町が五月に開設した産地直売所「はんばた市場」で買い取る仕組み。現金ではなく、町内で使える電子地域通貨「サンセットコイン」と交換することで、釣り客を町中へ呼び込み、消費を促す狙いだ。
買い取る魚は、品質管理を徹底したものに限定、釣った際に船の船長らが処理方法を教えてくれる。価格は魚種やサイズ、時価などによって決まる。この時季はイサキやサバ、マダイなどが釣れ、状態の良いマダイは一キロ千五百円程度。買い取った魚は町内の飲食店などを中心に販売し、地産地消にもつなげる。
中川さんは「コロナ禍で減った客を呼び込むとともに、漁業に注目してもらうことでわずかでも漁師の担い手不足解消につながれば」と願う。同町まちづくり課の担当者も「釣りを入り口に、漁獲量を少しでも補填(ほてん)し、観光にも結び付けられたら」と期待する。
サンセットコインは消費喚起のため町が五月に導入し、コインの単価「一ユーヒ」は一円に相当。飲食店など百店舗以上で使える。コインは専用カードか、スマホアプリで受け取れる。
中川さんは熱海市でも二〇一八年、釣った魚を地元の魚市場が買い取り、市内で利用できるクーポンを発行する「ツッテ熱海」も企画した。「これからも地域に応じて地域の良さを引き出せるオリジナルの企画を作っていきたい」と意気込んでいる。
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