横綱照ノ富士(30=伊勢ケ浜)が、東前頭3枚目玉鷲の偉業を阻止した。3場所連続で金星配給中の玉鷲を、冷静に見極めてからの突き落としで下して4勝目。同一力士に4場所連続金星配給なら昭和以降初となる屈辱だった。三役以上での2敗は大関貴景勝と2人だけ。2場所連続優勝に向けて、無傷の平幕逸ノ城、1敗の平幕翔猿を追う。

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照ノ富士が横綱の意地を見せた。目の前には3場所連続で金星配給中の玉鷲。これまで同様、立ち合いから強烈な突き押しをくらった。長い腕から繰り出される突きを前に、なかなかまわしに手が届かない。それでも絶対に引かなかった。何とかつかまえようと前に出続けて圧力をかけ、タイミング良くさっと体を開き、体が泳いだ玉鷲を突き落としで転がした。土俵下で見守った師匠でもある幕内後半戦の伊勢ケ浜審判長(元横綱旭富士)からは「落ち着いていた。相手にもっていかれることもなく良かった」と評価された。

弟弟子にかっこ悪い姿は見せられなかった。この日の横綱土俵入りで、新入幕の錦富士に初めて露払いを務めさせた。実は、場所前から6日目をお願いしていたもの。幕尻の錦富士が初口(幕内最初の取組)で相撲を取ることが多くなると予想。横綱土俵入り後すぐに取組となるため準備が慌ただしくなる上、新入幕として普段以上に緊張することを気遣って中盤戦以降と考えた。結果的にこの日は初口となった錦富士だが「感慨深かった。初めて間近で見てうれしかった」と目を輝かせた。弟弟子の露払いデビュー日に泥は塗れなかった。

前日5日目に2敗目を喫したが連敗はしなかった。3場所連続で金星献上と合口の悪かった玉鷲を下したことで、感覚は上向きになるはず。平幕の逸ノ城と翔猿を追う展開だが、まだまだ優勝争いはここから。2場所連続8度目の賜杯へ、横綱らしく堂々と突き進む。【佐々木隆史】

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