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回顧2019>(9) パラスポーツの芽吹き実感 にわかファンから始めよう:スポーツ(TOKYO Web) - 東京新聞

楽天ジャパン・オープンで、ファンにサインする国枝慎吾=東京・有明テニスの森公園で

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 10月上旬、夏の名残の日差しの下で、国枝慎吾(ユニクロ)はどこか楽しげにプレーしていた。男子プロテニスツアーの楽天ジャパン・オープンで今年から始まった車いすの部の会場は、有明テニスの森公園に新設された屋外ショーコート。3000人収容の観客席の半分に屋根があり、土、日曜の国枝の試合は屋根の下に収まりきらないくらいの観衆で埋まっていた。

 「日本の方に車いすテニスを、国枝を見てもらいたいと強く思っている。この試合が実現してすごくうれしい」。意外だった。車いすテニス界のスターとして世界で戦う国枝が、グランドスラムより3段階もグレードの低い大会で競技の宣伝役を担っている。

 国枝レベルの選手が出ている日本での大会は、グランドスラムに次ぐグレードの飯塚国際車いすテニス大会(福岡)のみ。記者会見では「国枝さんは出なくても良かったのでは」との質問もあった。国枝自身も「グレードは上げてほしかった」と不満は口にした。ただ「これだけの観衆の前でやるのはなかなかない。グランドスラムもそれほど多くない」とも。

 ノバク・ジョコビッチ(セルビア)が初参戦した大会自体には連日1万人が集まり、隣の有明コロシアムはスーパースターのプレーに沸いた。入場券は車いすの部も共通で「ついで」に試合をのぞいた人もいただろう。国枝はシングルス優勝後のコートで「ジョコビッチが始まる前に終わって良かった」と笑わせた。

 今年からパラスポーツ担当になり、よみがえった苦い記憶がある。東京パラリンピック開催が決まる7カ月前の2013年2月。初任地の地方都市で、車いすバスケットボールの漫画に感化されて地元チームを応援し始めた男性の記事を書こうと、一緒に練習場所を訪ねた。だが、彼が作った応援旗を披露しても、選手たちの表情はどこか険しい。チームのリーダーは言った。「僕らの試合に関係者以外はまず来ない。観客席はガラガラ。そういう中でいきなりそんな旗を掲げられても、正直戸惑う」。空回りに気づいた彼は何も言えず、記事は書けなかった。

 今年の車いすバスケや車いすラグビーなどの大会は、平日に学校単位で児童が観戦してにぎわっていた。スポンサー企業も増え、社員はこぞって応援に訪れる。だがパラスポーツの会場に、一般の観客はまだ少ない。突然現れた「にわかファン」に卑屈になったリーダーの気持ちも今は少し察する。でも、初めはにわかで良いのだと思う。来年の東京パラリンピックは、生で見て感じるものがきっとある。 (神谷円香)

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December 25, 2019 at 05:11AM
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